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仕事が楽しくなる名言集
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Author:Makiko Mizuno
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17,
2011
2011年12月3日に法と言語学会の大会が金城学院大学栄サテライトで開催されました。後半のプログラムは、リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件公判での通訳問題に関するミニ・シンポジウムでした。
これは殺人及び死体遺棄事件で、当然裁判員裁判でしたが、2006年から導入されている被害者参加制度により、被害者の家族が裁判に参加し、それが外国人なので通訳がつくという点では、全国初の事件となりました。逃亡中の犯人逮捕のようすなど、事件自体がマスコミに派手に報道され、大きな注目を集めていましたので、裁判にはマスコミ関係者が多く詰めかけていたはずです。 私がこの裁判の通訳問題に関心を持ったのは、1本の電話がきっかけでした。裁判が結審した日だったと思うのですが、大学の研究室にいる私のところに、Japan Timesの記者であるKさんから電話がありました。Kさんは、リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件を追う目的で裁判を傍聴していましたが、聞いているうちに、法廷通訳の正確性に疑問を持つようになったということでした。それで、オリジナルのスピーチと通訳の訳出を比較し、疑問に思う点をすべてメモし、それらに基づいて専門家の意見を聞いた上で記事にしようとしておられたのです。 Kさんは私との話の中で通訳エラーをいくつか指摘され、こういう不正確な通訳が法廷で起用されているという実態に対し、現体制の問題点についてコメントして欲しいと言われました。私としては、過去のニック・ベイカー事件やベニース事件の際に述べた点を再び強調するしかありませんでした。つまり、法廷通訳には非常に優秀な人とそうでない人が混在しており、法廷で通訳するに足る能力のない人が、現に多くの誤訳やエラーをしているにもかかわらず、他分野の通訳のように市場メカニズムによって排除されることがないという、現体制の致命的な欠陥についてです。 日本の法廷通訳をめぐる状況で顕著なのは、裁判所が、あるいは法律家たちが、通訳者に対して異様に寛大なことです。会議通訳やビジネス通訳であれば、絶対に二度と雇ってもらえないようなレベルで通訳していても、裁判所からは何も言われません。通訳者のことを「先生、先生」と呼んで持ち上げること自体、外語大学などの先生を呼んできて通訳してもらっていた昔の時代そのままの意識でいることの現れです。通訳者をプロであると認識していれば、そのような呼び方はしないはずです。そして、そのパフォーマンスに対して、もっと厳しくなるはずです。 また、通訳者たちに関しても、一緒独特のグループを形成していて、他の分野の通訳者たちの持っている常識とは異なる常識に基づいて仕事をしている人たちが結構いるようです。一般の通訳とは異なる尺度の最たるものが、どんな長い裁判になっても1人でやりたいと言う人が多いということです。 リンゼイ・アン・ホーカーさん事件の裁判では、法医学的内容が多く扱われ、窒息に関する議論などでは、通訳者がついていけなくて悲鳴を上げたという新聞記事もありました。このような事態が当然予想されるにもかかわらず、裁判所は、通訳人本人が一人のほうがやりやすいと言ったという理由で、2人体制にはしませんでした。これは暴挙とも言うべきことです。プロの会議通訳者なら、このような仕事の場合、必ず複数体制を主張しますし、タイマーなどを使って20分か30分ごとに交代するということを、ごく当然のこととして行っています。 国連によるものをはじめとする様々な研究によれば、通訳者が生理学的および心理的に正常に稼働できる限界は30分だということがわかっています。30分を超えるとミスが出始め、1時間を超えたころになると、一種の虚脱状態に陥ってしまい、自分のミスにも全く気付かず、大変な誤訳をすることもあるということです。これは同時通訳を対象とする研究ですが、法廷という緊張を要する現場で、しかも高度に専門的な内容を扱うのであれば、逐次通訳であっても、これと同様の、あるいはもっとシビアな状況に置かれていると考えてもよいと思います。 長時間の通訳でも1人でやりたいと法廷通訳人が希望する背景には、報酬の問題があるという人がいます。法廷では会議通訳のように拘束時間で金額が決まるのではなく、実際に通訳している時間だけしか支払われないからだというのですが、法廷通訳の報酬に関しては非常に不透明なところがあり、裁判官の裁量で決まることも多いと聞きますので、真偽のほどは明らかではありません。 いずれにせよ、現在のような法廷関係者と通訳人との間のなれあいとも言うべき状況を排し、市場原理にさらされる会議通訳の世界のような厳しさを持たなければ、いつまで経っても不正確な法廷通訳の問題はなくならないでしょう。 ある検察官が、「法廷通訳には会議通訳のレベルを求めていない」と明言しました。しかし、法廷では正確性が第一だということも述べていました。それは矛盾に満ちた発言です。私は法廷通訳が会議通訳に比べてレベルが低いと言いたいわけではありません。ベテランの会議通訳者に決して負けないレベルで仕事をしている人も多く知っています。ただ、会議通訳の世界では完全に排除されるレベルの人も堂々と通訳することができるという異常さを指摘したいだけです。 公正な裁判のために正確な通訳は不可欠です。裁判所、そして法律実務家の人たちが、何とかこの問題に真剣に取り組んで、レベルの高い法廷通訳人が育つ環境を作ってほしいものです。 リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件公判での具体的な通訳エラーについては、ここをクリックし、英字新聞の記事を読んでください。
14,
2011
あまり話題に上ってはいない事件ですが、日本の商船を襲ったソマリア人の海賊3名が逮捕され、未決拘留中です。裁判員裁判にかけられる予定ですが、通訳人が見つからないという理由で、3か月以上、開廷ができないままの状態です。
少数言語の場合、通訳人がなかなか見つからないのはよくあることです。この場合もソマリ語の通訳ができる人材がいないということですが、そのような場合、通常は被告人の国の大使館などに連絡して、通訳できる人を派遣してもらうという手段が取られるようです。ところが、ソマリアは政府自体がほとんど機能していない国で、日本に大使館などありません。つまり、裁判所としては、全くのお手上げ状態なのです。 この事件で思い出したのが、聴覚障害者が被告人だった「森本さん事件」です。被告人は、ある事務所から600円を盗んで捕まったわけですが、手話の訓練を受けていず、人とコミュニケーションを取る術を持っていませんでした。彼に対しては、守秘義務すら告知することができず、結局、裁判が停止になったまま、亡くなるまで20年近くもの歳月を「被告人」という立場のまま送ることになったのです。 今回の海賊たちも、通訳人が見つかるまで、ずっと未決拘留のままでいることになるのでしょうか。国際関係という視点からも、それは無理なことでしょう。裁判所も何らかの対処をしなければなりません。韓国ではソマリ語から英語、英語から韓国語と、リレー通訳を行ったということです。日本もそれしかないかもしれません。 そのようなリレー通訳をする場合は、被告人が第2言語である英語に精通していることが条件となります。使いこなせもしない言語で証言することを強要することはできません。 国際人権自由権規約の第14条は以下のように定めています。 3 すべての者は、その刑事上の罪の決定について、十分平等に、少なくとも次の保障を受ける権利を有する。 (a)その理解する言語で速やかにかつ詳細にその罪の性質及び理由を告げられること。 (f)裁判所において使用される言語を理解すること又は話すことができない場合には、無料で通訳の援助を受けること。 つまり、英語が「その理解する言語」と言えるほどのレベルにない場合は、彼らは母語であるソマリ語の通訳の援助を受ける権利があるということになります。 では、仮にソマリ語の通訳人を見つけることが完全に不可能で、海賊たちが理解する言語がソマリ語以外にはない、ということになったらどうなるのでしょうか。 1960年代にアメリカでこんな事件がありました。ドナルド・ラングという聴覚障害者が殺人事件を起こして起訴されましたが、この人は手話等のコミュニケーション手段を持っていませんでした。結局、精神障害者と同様に訴訟不適格とされ、措置入院をさせると同時に手話を学ばせるようにするという決定がなされようとしていました。ところが、弁護人が、裁判が行われれば、無罪の可能性もゼロではないし、有罪であっても、司法取引その他で刑期が短くなる可能性があるのに、そういう形での措置入院だと、被告人は永久に拘束されてしまう、それでは終身刑になってしまうので不公正だ、と主張しました。そういうことで争っていたわけですが、結局、一番重要な証人が死亡してしまし、裁判ができなくなって被告人は釈放されました。ところが、それから間もなく、被告人は再び殺人事件を起こしてしまったのです。 コミュニケーション手段がなく裁判ができないからといって、精神障害者と同様に、有無を言わせず施設内に監禁してしまうのは人権侵害です。しかし,かと言って、危険な人物を自由にしてしまうのは社会にとってのリスクです。この2つを天秤にかけた場合、どちらが重いでしょうか。これは大変難しい問題です。 今回の海賊の事件ですが、彼らは自分の国籍や年齢すらはっきり知らないということですし、人定質問自体が成り立たない可能性もあります。言葉の壁以外にも多くの壁が存在しているようです。まるでパイレーツ・オブ・カリビアンの時代からタイムスリップしてきた人たちを扱っているようなものなのでしょう。
01,
2011
3月11日、東日本を地震と津波が襲った時、私はハワイのホノルルにいました。科研費研究プロジェクトの一環として、ハワイ大学法科大学院でのプレゼンやハワイの法廷での傍聴などを中心に、研究のために訪れていました。
ハワイ滞在のちょうど3日目、大切なプレゼンを無事終えた日の夜8時ごろ、日本でマグニチュード8.9の大地震が起きたというニュースが流れ、それに続き、ハワイに津波が来るということで、ハワイ全土に警報が鳴り響き、TV番組がそのニュース一色になりました。 計算によると午前3時9分にオアフ島に津波が到達するので、住民はみな、海辺から離れて山のほうに避難するようにという勧告が出されました。津波の高さは6フィート、つまり2メートルくらいだと予想されるが、太平洋上の最後の観測地点以降は、実際にカウアイ島に最初の津波が来るまでは、その高さは正確には予測できないということでした。 ビルの6階以上は大丈夫なので、観光客はホテルの上層階に留まるようにと言われましたが、私の部屋は32階、研究グループの他のメンバーの部屋は30階だったので、特に移動することもありませんでした。でも、もし2メートルの津波が来たら、ホテルの下層階は水浸しになり、電気や水道関係がすべて機能しなくなることは当然予想されました。高層階から外に出るだけでも大変です。私たちは可能な限りの水と食べ物を用意し、1、2日はホテルに籠っても大丈夫なように,準備をしました。 「予定の時刻の3時9分までにあと○○時間○○分なので、早く高いところに逃げるように」という放送が繰り返し行われる中、ワイキキの街から人と車がだんだん消えて行きました。リアルタイムで浜辺の様子がTVで映し出されていましたが、わざわざ津波を見物しようと浜辺に出ているお馬鹿な3人の人影に向かって、警察のヘリコプターが避難を命じる様子も映りました。 夜の12時を過ぎるころには、通りはゴーストタウンのようになっていき、高層ビルのホテルに留まっているのは、まるでノアの箱舟にいるような気分です。取り残されていくという孤立感を強く感じました。 ずっとTVをつけていましたが、日本で津波が町を押し流している恐ろしい映像が繰り返し放映されました。まるで映画のシーンのようで、こんなことが実際に起こったなんて、信じられない気持がしました。アメリカ人たちにとっても、かなりショッキングな映像だったようです。 それを見ていると、本当にホテルなどのビルは大丈夫なのだろうかという恐怖の気持ちがわいてきたので、私たちはホテルを出てハワイ大学などのある高台まで行こうか、というような相談もしました。そこまで歩くには最低1時間はかかるから、2時までには決意しなければなりません。私はハワイ在住の友人に電話で相談したら、本当に避難するなら車で迎えに行くけど、ホテルは絶対に大丈夫だと思うよ、と言われました。結局避難するのはやめてホテルに留まることにしましたが、後で聞いたところでは、その時には警察が道路を封鎖していて、どちらにせよ、その友人はワイキキには入れなかったそうです。 私はずっとTVの前にくぎ付けになっていましたが、予定の3時9分が近付くにつれ、恐怖心と緊張が高まり、心臓の鼓動は早鐘のようになり、息苦しくなりました。あんな長時間、極度の緊張にさらされたことは初めてで、異常な体験でした。 結論としては、ワイキキには津波らしいものはほとんど来ませんでした。昔からハワイの王族の別荘地だったところなので、自然災害による被害は少ない場所だろうと考えていましたが、やはりその地形から、大きな波は寄せにくかったようです。マウイ島などでは道路まで水をかぶり、多少の被害はあったようでした。ハワイより本土のカリフォルニアのほうが被害が大きく、一人、津波に流されて亡くなった人も出たようです。 その日は、安全を確信するまで、朝の4時頃まで起きていましたが、ずっとTVの報道を見ていて、色々と感じたことがありました。 まず、災害に際して、アメリカ政府は日本政府に比べ、国民を守るという意識が強いということです。今回の津波に関しても、もし津波が来た場合、警察、病院その他、国民を守る体制がどうなっているかについての情報をきちんと流していました。日本の場合、被害状況についての報道はあっても、国民を政府がどう守るかという点については、全く何の情報もありません。情報どころか、そういう態勢が整っていないのでしょう。危機管理という点では、日本は本当に平和ボケしていると感じます。今回の大災害で、その弱点がもろに表れたと言っていいでしょう。 原発事故についても、日本政府の避難勧告が原子炉から20キロや30キロ圏内だった時に、アメリカ政府の在日アメリカ人に対する避難勧告は80キロでした。情報を小出しにして「安全だ」「健康被害はない」と言い続け、結局、次々と避難勧告の対象を広げていかざるを得なくなっていた日本政府に対して、人々の間で、本当に国民を守ることなど出来ないのではないかとの不信感が募っているのが現状です。 今回の報道で、非常にハワイらしいと感じたこともありました。ニュースのレポーターの男性が「僕のお父さんは今仙台にいるんだ。無事なのか、心配でたまらない」と、個人的なことを視聴者に向かって言うのです。そして、しばらくすると、同じレポーターが「お父さんと連絡がついて、無事が確認出来た」と視聴者に報告しました。それに対し、他のキャスターやレポーターが皆で拍手する様子も放映されました。日本ではありえない光景だと思いました。皆が大変な時には自分のことは言わないのが日本の美徳です。家族が亡くなっていても、それについては何も語らず、ひたすら自分の任務を全うする姿を美しいと感じるのが日本人の国民性です でも、その時思ったのですが、あれほど悲惨な津波の映像が繰り返し流される中、そのレポーターの父親が災害の真っ只中で無事だったという報告は、視聴者の心に1つの灯明となって、救いの役割を果たしたのです。こういうことも大切なのかもしれないと、あらためて感じました。 また、ハワイ全土に津波への警戒と緊張が高まっていた中で、ニュースでレポーターが「みんなで団結して助け合いましょう。みんな「オハナ」です。」と、繰り返していました。ハワイアン・スピリットの中でも最も大切な「オハナ(家族)」が強調されたのです。その言葉を聞くだけで、何となく温かい気持ちになるのがハワイです。 今、日本は本当に大変です。原発事故のために災害後の復興もままならないし、その影響によって、元々予想されていた経済破綻という爆弾への導火線が、確実に短くなりました。日本人が本当に賢い民族かどうかが、今後の国の在り方に直接反映してくるでしょう。政治家たちは、次の選挙での票の行方ばかりを気にしており、日本の将来にとって本当に必要な決断が下せないでいます。有権者も、今100円くれるけれど明日1000円を奪い取っていく人がいいのか、今は100円取るけれど明日1000円返してくれる人がいいのか、よく考える必要があると思います。 いずれにせよ、今回の震災がこの国にとっての大きな転換点になることは間違いないことでしょう。
12,
2011
現代医療と言霊(ことだま)の力
数年前、アメリカのワシントン州の医療通訳認定制度の調査のためにシアトル市を訪れたことがあります。海辺の風光明媚な町で、魚介類がとてもおいしい所です。また、シアトル・マリナーズの本拠地ですから、至るところにマリナーズ関連のグッズが売られています。一面が巨大なICHIRO選手の映像になっているビルもありました。 ワシントン州はアメリカで最初に公的な医療通訳者認定制度が発足した州です。南米からの移民が多いのは他の州と同じですが、ベトナム、カンボジアなどのインドシナ難民の流入も多く、言葉の問題が深刻だったこと、また、州の経済事情が良好で、予算的に余裕があったことから、他の州に先駆けて医療通訳の体制を整備することが可能だったということです。 さて、医療通訳の調査の中で、色々と面白い話が聞けました。医療通訳の世界では”Cultural Competence”(文化的な能力)、つまり、文化的な違いをよく知り、それをうまく処理する能力が一番大切だということを、関係者がみな強調していましたが、1つ興味深い例が挙がっていました。それは、ネイティブ・アメリカンのナバホ族のことです。 通訳は、一般的に、一人称で話すことになっています。つまり、話し手が「私は・・・・・・しました。」と言えば、通訳者も、やはり、別の言語で「私は・・・・・・しました。」と言わなければなりません。通訳に慣れていない人は、このような場合、つい、「彼は・・・・・・しましたと言っています。」のように「報告形式」で訳してしまうことがあります。そのようなことのないように、通訳者は、ちゃんと一人称で訳すよう、訓練されるのです。 ところが、ナバホ族の場合、そのようなルールを当てはめることは無理だということです。ナバホ族の間では、言葉は魔力を持つものであるという考えが根強く、言葉に出してしまうとそれがそのまま現実のものとなると信じられているのです。ですから、もし患者が「私は心臓が悪い」と言った場合、通訳者が「私は心臓が悪い」と訳すと、通訳者自身の心臓が悪くなると考えるわけです。そういう理由で、もし患者が「私の癌はよくなるのか」と言ったら、「この人は自分の癌がよくなるのかと言っています」というように、「報告形式」で訳すしかないのです。 医者も気をつけなければならないことがあります。例えば「あなたの場合、手術をしても障害が残ることがあります」というように、その患者を対象に語ると、患者はそれがそのまま自分の上に降りかかると考え、恐怖を感じるそうです。このような場合、医者は「あなたと同じような問題を抱えている人の場合、手術をしても障害が残ることがあります。」というように、第3者のことを話しているような形を作らなければならないということです。 この話を聞いて思い出したのが、日本の「言霊」(ことだま)の概念です。古代、言葉に宿っている不思議な霊力が働いて、言葉どおりの事が起きると信じられていました。日本のことを「言霊の幸ふ国」(ことだまのさきはうくに)、つまり、「言霊の霊妙な働きによって幸福をもたらす国」と呼んでいたこともありました。 今でも、私たちは、何か良くないことを想像し、それを口に出すと、なんとも言えない不吉な感覚に捉えられることがあります。口に出そうとして、ふと、ためらうこともあります。言ってしまうと取り返しの付かないことになるというような、漠然とした不可思議な不安を感じることがあります。言葉というものは、そういう意味で、不思議なパワーを備えたものです。 これは脳の仕組みとも関係があるようです。よく、強く念じたことは実現すると言いますが、人間は、何かを強く心に思うと、脳が、それが実現する方向に向かうための情報を選択して集めるらしいです。そして、何かを口に出すということは、自分の想念を明確にするということに他ならないのです。口に出すことで、自分の思いをさらに強固にするということです。このように考えると、言葉に表したことが本当に起こるという考えも、非科学的だと一概に決め付けることは出来ません。 ナバホ族の場合も、近代的な医療機関である病院にやってくるのですから、現代医療を否定しているわけではないし、むしろ頼りにしているわけです。でも、「言霊のパワー」もまた、彼らにとっては、否定できない1つの真実なのです。私たちが「俗信」とみなしている事柄も、彼らにとっては根拠のある一種の科学かもしれないのです。 先進的な医療機器に囲まれた診療の場で、医者や看護士が患者の文化をしっかり尊重している姿は、一種の感動を呼び起こします。そんな中で本当のコミュニケーションが生まれ、正しい診断と治療につながるのだと、アメリカの医療通訳関係者は口をそろえて言いました。
18,
2010
12月8日から3日間、学会出席のためにマカオを訪れました。マカオは、街自体が世界遺産で、ポルトガル関連の多くの歴史的建造物があるということだったので、さぞしっとりとした風情のある街だろうと想像していました。ところが着いた途端、想像していたものとのあまりの違いにびっくりしました。街全体がまるでテーマパークです。ホテルはほとんどカジノになっていて、とにかく派手な形と色彩にあふれ、しかもクリスマスシーズンで、通りや広場がすべてイルミネーションであふれていました。
![]() セント・ポール寺院の遺跡も、その前の広場には数多くのパンダたちのイルミネーションが並び、そのミスマッチには笑うしかありません。日本では考えられない光景でした。高台には古い砲台がありましたが、大砲の砲身の先には、町で一番目立つリスボア・ホテルの偉容がそびえ、これも一種のミスマッチです。 ![]() マカオの「食」ですが、ポルトガル料理をマカオ風にアレンジした、いわゆるマカオ料理が有名です。最も人気があるらしいレストランを選んで、2晩続けてマカオ料理を楽しみました。カレー・クラブ(蟹)が有名らしいけれど、カレーはちょっと…と思い、他のカニ料理を注文しました。当然、蟹がそのまま出てくるかと思ったら、想像もしていなかった姿の蟹が現われました。甲羅に蟹の身を詰めて揚げたもので、まるでコロッケです。ご丁寧に、まるで目のようにオリーブをあしらった姿は、とてもコミカルでした。 ![]() マカオ名物のエッグ・タルトは、ガイドブックなどでも取り上げられている有名なカフェ・エ・ナタ(http://www.analatte.com/lattespecial/71/spot7.html)で食べました。足を踏み入れるのを一瞬ためらうような、とてもきれいとは言えない下町の路地裏にこのお店を見つけた時には、またしても、そのミスマッチに驚きました。でも、エッグ・タルトは確かに美味でした。 ![]() マカオには、様々な要素がミックスされています。ポルトガル時代の建造物の明るいパステルカラー、中国風の赤や緑の色彩、そして多くのカジノの派手派手しい形と色と光、そこに今はクリスマス・イルミネーション。これらが狭い街にひしめき合っているのです。
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