スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
Makiko Mizuno
スポンサー広告


異文化伝心(16) 翻訳できないジョーク

 4年ほど前でしたが、テレビのワイドショーで、「世界一面白いジョーク」についてコメントしていました。そのジョークとは、だいたい以下の内容でした。

 ハンターが二人、狩に出かけて行きましたが、その内の一人が(木から落ちたのだったか何かで)瀕死の重傷を負い、動かなくなってしまいました。もう一人のハンターは、あわてて無線でレスキューセンターに連絡を取りました。
「友達が大怪我をしたんだ。もう死んでしまったかもしれない。すぐに来てくれ。」
レスキューセンターのオペレーターは、こう言いました。
「落ち着いて。死んでいるかどうか確認してください。」
数秒ののち、オペレーターの耳に、バーン! という銃声が聞こえてきました。

 このジョークについて、番組のコメンテーターたちは、怪訝な顔をして、口をそろえて言いました。「これの何が面白いんでしょうねえ。」「これは一種のブラック・ユーモアだと思うけど、どこが面白いのかわかりませんね。」
 次に、番組は、アメリカの街角のシーンに移り、このジョークを聞いた人たちの反応を見せてくれます。アメリカ人たちには、例外なく、このジョークは大受けでした。皆、「最高だ!」と笑い転げます。
 それを見た後、番組のコメンテーターたちは、ますます訳がわからなくなったようで、口々にこんなことを言っていました。「日本人にはユーモアのセンスがないんでしょうかねえ。」「世界のほかの人たちと感性が違うということでしょうね。」「やはり、日本人はちょっと特別ですね。」

 これを見て、私はあきれ返りました。「ちょっと、待ってよ。これは日本語のジョークじゃないでしょ。翻訳でしょ。」
 私はこれの原文を見たわけではないので、想像にすぎませんが、なぜ、英語で聞いた人が大笑いしたのか、確信を持って言えます。オペレーターの、「死んでいるかどうか確認してください」というせりふは、英語ではMake sure he is dead. だったはずです。
Make sure he is dead.(彼が死んでいるか確かめなさい)は、状況しだいで別の意味にもなります。「彼が確実に死んでいるようにしなさい」、つまり、「とどめを刺しなさい」という意味です。
 このジョークの面白さは、登場人物がハンターである、ということです。獲物を撃ってはとどめを刺すことを日常的にしている人です。Make sure he is dead. と言われて、つい、いつもどおり、とどめを刺してしまったのです。街角のシーンで、このジョークを聞かされたアメリカ人男性が、笑いながら、「ハンターだからね。」と言っていたのを思い出します。
 それにしても、このテレビ番組作成者は、一体何を考えていたんでしょう。どうも、主旨は、「世界一面白いジョークが面白いと感じられない日本人の感性」だったようです。でも、この番組で露呈したのは、言語や文化に規定されるジョークの価値、そして、異文化・異言語間の翻訳の困難さ、といったものに対する日本人の認識と感性の乏しさだったように思います。

スポンサーサイト
Makiko Mizuno
エッセイ(異文化伝心)


| HOME |
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。